馬関まつり

70周年記念事業

理事長所信

わたしたちはいつだって未来に生きる。

わたしたちは限りある時間(とき)を青年として生き抜く。

自分たちの五感を研ぎ澄まし、共に夢を描き続けます。

 

わたしたちは美しく群れる。

足並を揃えて踏み出す一歩は、大地を揺らすことが出来るかもしれません。

そう信じて、青年会議所運動を行います。

はじめに

 下関青年会議所は、1953年5月4日 28名の志高き青年により、国内41番目の地域青年会議所として設立され、情熱溢れる先輩諸兄姉によって、その精神と組織が脈々と引き継がれてきました。まちづくり・ひとづくり・組織づくりに真摯に取り組まれた成果やひとつひとつの過程、そこで起きた波乱や激動が積み重ねられ、本年度、創立70周年を迎えます。わたしたちは、この歴史や伝統を大切にし、一枚岩として活動していく所存です。

 現代の日本は、各分野における技術革新により、新しい産業が生まれ、著しい社会構造の変化が起こっています。それに伴い、青年会議所が輩出すべきリーダー像や担うべき地域課題も変わりつつあります。さらに世界的パンデミックを起こした新型コロナウィルス感染症との共存により、新しい生活様式や新たな経済活動を取り入れ、わたしたちも時代に呼応した地域社会活動を導き出さねばなりません。また2022年2月、ロシア連邦によるウクライナ侵攻が強行されました。尊い命を奪い、人権を無視した戦いがなされ、それは今も続いています。この争いは2国間に留まらず、周辺近隣諸国や関係する国々に影響を与え、国際秩序のあり方が問われています。そして、地球環境の変動は無視することはできません。持続可能な都市を目指す上で、新たなエコエネルギーの創出やエネルギー循環を実現した社会開発が必要です。

 世界情勢が混乱し、平和が揺らぐ現代において、わたしたち下関青年会議所は強く柔軟に歩んでまいります。地域課題に多角的にアプローチし、過去・現在を読み解き、創造的な感覚をもって青年会議所活動を展開してまいります。

持続可能な地域構築と地域における文化・芸術の展開

 持続可能な社会構築のため、率先したDX(Digital Transformation)技術の取り入れやWEB3.0という新しい社会概念の生成が起こっています。現実と仮想空間の間(はざま)で、地域のあり方や生活のビジョンを見い出さねばなりません。そのためにも、まちの個性の醸成とその発信や交流の矛先の関係を紐解き、明確化する必要があります。都心部に依存するのではなく、地域ごとの特性を再評価しながら、個性あるまちの創造に尽力します。

 下関が交通の要衝として陸路・海路・空路を身近に持っていることは大きな特徴です。下関北九州道路(下関―北九州間に架かる橋)や長門・下関間における山陰道の建設によって、物流・人流において更なる展開が期待されます。また、関門鉄道トンネルは開通より80年が経過し、老朽化が著しく、新下関駅(新幹線駅)及び周辺の賑わいの衰退などは大きな課題です。わたしたちは、地理的優位性を最大限に活かし、地域の人々の活動をより豊かにする新しい仕組みを模索せねばなりません。「なんのために、だれとつながり、どこに向かうのか」ということを明確にした上で、下関におけるビジョンを構築します。生産年齢人口が激減する本地域ではありますが、様々な分野の先進技術と地域特性を掛け合わせ、広い視野を持った経済循環の基盤づくりに奔走します。わたしたちが生き、働くための豊かな社会のカタチを追求し続け、的確なパートナーシップを構築し、存続可能都市・下関を共に創り上げたいと切に願います。新しいローカルモデル構築の起点を創造するべく、小さくとも、大きく広がる波紋を起こすために挑戦し続けます。

 また古くから水産業で栄え、臨海地区の発展や港湾機能の充実化によって港湾都市として成長しました。さらには観光地としての魅力を高めるようなプロジェクトを取り入れ、現在に至ります。他都市と比較しても、都市開発・再整備のプロジェクトが予定されており、大きく様相が変化することが期待されます。下関駅から唐戸エリアまでの中心市街地の開発は、「下関海峡エリアビジョン」の策定によってビジュアルとしてのビジョンも共有さてれおります。また、西日の美しい日本海側のロードサイドショップの出店や体験型の海辺のアクティビティの創出、山林の再整備などが具体化されることで、アフターコロナ時代における新たなツーリズムの実現が期待されます。

 一過性の観光都市にならぬよう交流人口の変動や変わりゆく景色に対し未来予測を行い、次代のまちの形成を行わねばなりません。市民の誇れるまちを保つための新しいアイデアを創出し、今までにない視点をもって地域づくりに挑戦することでまちの魅力を高めます。

 本市の海峡や海辺の美しさは無二です。「次はどんな新しい価値を付加できるか」というワクワクした感覚を失わず、創意ある文化的発展を目指します。

広域連携や交流のパラダイムシフトと発展

 下関は立地的・歴史的背景からも、広域な連携を行ってきました。特に関門海峡地域は世界でも類を見ない美しい景観を共有し、様々な事柄や事業において連携してきました。しかしながら、山口県内における下関以東の地域との交流は希薄です。広い視点でまちや地域を紐解くことは大切で、下関を含む周辺地域の未来を「点」で描くのではなく、互いを結び「線」として捉え、「面」として描くべきであろうと考えます。港を保有するまちや臨海地区の開発が著しい地域のことや豊かな自然や観光資源を互いによく知り、関係する諸団体とパートナーシップを強靭化することによって、新しい価値観が展開され、文化的融和を起こすことが可能です。現在においても、一般社団法人北九州青年会議所との友好締結は継続していることを起点とし、地域の課題やビジョンを共有する同志としての関係の発展を目指します。

 また、わたしたちJCIは、国や地域を超えて同胞を持つことが大きな特徴のひとつです。JCI KOREA BUSANと一般社団法人福岡青年会議所との「トリオJC」は半世紀を超える友情を築いてきました。数多くの人や事業を通した交流を行ってきました。しかしながら、ひととひと、まちとまちの交流に対し、新型コロナウィルス感染症は少なからず影響を及ぼしています。「同胞としての価値」を再度見直し、経済的、文化的交流の新しい形を模索し挑戦します。次代に歴史を繋ぐためのパラダイムシフトを見据えて、様々な観点からイノベーションを起こせるよう尽力します。

激変する社会構造を見据えた目指すべき人財共育

 今、わたしたちが生きている社会の仕組みや常識は日々更新され、多様化しました。その背景には、経済活動のグローバル化による人口流出や少子化・超高齢化による人口構造の変化があります。それらに対し、適応し、自分たちの力でより豊かな社会を築いていくために、「ダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)」という概念が重要であると考えます。D&Iとは、性別、年齢、障碍や国籍、さらには性格や社会的地位などに捉われず、個の多様性を認め、受け入れながら協働する精神やその仕組みのことです。D&Iを掲げる理由としては、集団主義的指向を持ちやすい日本人にとって、その実現は強く意識せねば達成しにくい事柄であると考えるからです。協調性は高いが、個性が認められにくい社会性質であり、「村八分」の状況はどこにでも起きます。いじめや差別、仲間外れを消滅させ、多様性に富んだ未来を生み出せる人財の構築が急がれます。

 また、学校生活や働く場においても、他者の個性を認め、様々な要素を掛け合わせるような独創的な活動が求められる時代となりました。個人の能力や個性を活かしながら共同することで得られる一体感や当事者意識、その結果として想像を超える体験や改革が起こせるのではないでしょうか。古きに学び、新しきを知る日本らしい丁寧さを忘れず、誰もが声を挙げ「put your hands up!」、繋がり合う豊かな社会に向かわねばならないと考えます。そこに性別や国籍、心的・身体的違いや思想相違による隔たりはあってはならないのです。

創造的探究心を育む次世代共育

 現代、下関に生きるこどもたちの教育環境は、Society5.0時代の到来やアフターコロナを見据えた事業展開を主軸として行われています。GIGAスクール構想の加速化に対応すべく、ひとりひとりに対してタブレット端末を整備し、臨時休業時にオンライン学習が行えるような環境が整いました。また教育カリキュラムとしても、社会との接点を重要視し、働くことの意義やその方法などについて実体験に基づいた大人と触れ合う機会、職業体験や社会活動を大切にしています。それらの根底にあるものは、「課題発見能力とその問題解決のための思考力」を養う力の醸成ではないでしょうか。自分たちの目で「今」を見つめ、考え、未来に向かってやってみるという経験は何にも代えがたいものとなるでしょう。

 また、学校以外の活動においても専門性が向上し、民間の指導者や保護者の参入が顕著にみられるなど、ひとつの学校ではコントロールできない教育環境があるように感じます。各課外活動や部活動の現状を把握し、今こそ官民の連携した新しい共育コミュニティーの再考が必要です。

 さらに、科学的な思考を持ち合わせ、未知なる体験と向き合う機会は必須で、そのような条件下において、身の回りの課題を解決していかねばなりません。下関市は、豊かな自然と古い歴史に囲まれています。自分たちの未来を自分たちでつくる意思を醸成することを重要視した事業展開を目指します。清新に研ぎ澄まし、剛健に振るわねばならない時代です。こどもと共に学び、明るい豊かな社会づくりのための基盤を強靭化します。

新しいステージにシフトする「第46回馬関まつり」

 昨年、新型コロナウィルスへの感染者数が減少しない状況の中、第45回馬関まつりを通常開催することができたのは、市民の方々のご理解や関係諸団体の皆様のご協力の賜物です。心から感謝いたします。

 馬関まつりは、市民やまちの賑わいのために「歌と踊りとみんなの夜市」として始まり、山口県下最大のまつりへと成長しました。感染症拡大の影響により、中止を余儀なくされた2020年。しかしながら、翌年には非接触型のまつりとして、市民の皆様の馬関まつりの思い出写真によるモザイクアートを制作しました。さらに「馬関まつりof Spring」として、春の馬関まつりを企画し、昨年の通常開催に至りました。

 馬関まつりの開催地域は下関駅周辺から臨海部、さらに中心市街地を核としています。特に臨海部や中心市街地はまちづくりや都市開発のプロジェクトが進行していることからも、開催地域の選定やまつりの規模や運営、各エリア間の連携において工夫が必要です。まちの様相が変わりつつある中で、わたしたちは常に未来を見据えて、まちの現状や課題と向き合い、次代のまつりやイベントのカタチを模索します。馬関まつりの根底にある「市民の笑顔とまちへの活気のため」ということを強く意識し、市民の方々の心が躍るような事業を実施します。

会員の資質向上および組織力向上のための会員拡大

 わたしたちは、「青年会議所のための青年会議所活動」からの脱却をせねばなりません。そもそもわたしたちは、明るい豊かな社会のために足並みを揃え、活動している団体です。その中で礼節を学び、組織を学び、ひとりの強い青年経済人としての成長を目指しています。昨今、会員数の減少に伴い、会員の意識の低下や歴史への理解の浅さが目立ちます。「誰かがやってくれる精神」の蔓延と「失敗を恥じるがゆえの無関心さ」が、事業やその他活動の質に反映されている状態です。これは当会に限らず、その他多くの組織においての課題とされます。

 わたしたちは、「誰一人残さない仲間づくり」を目指し、まちづくりやひとづくり事業に取り組む気概を再燃させます。本気で取り組み、大いに失敗する。それをフォローし合える仲間意識は、本会の誇るべき真髄です。そのためにも、内部における研修や学びの時間を重点的に計画し、会員の資質の向上を目指します。ひとりひとりが身の廻りで起こる小さな事象に対して問題意識を持ち、その問題意識を共有することで、多角的な視野を持った青年経済人となれるよう尽力します。ひとりひとりが心置きなく個性を表現し合える状態こそ、現代に必要な集団美の理想ではないでしょうか。70年の心を繋ぎ、新しい時代のあるべき組織像の構築に奔走します。広報戦略に取り組んでまいります。

創立70周年を迎えた青年会議所運動の基盤構築と思想の共有

 わたしたちが創立70周年を迎えるにあたり、今考えること。それは、何よりも次の1年にバトンを継承すること、次の10年も迷わず挑戦し続けるためのマインドを構築することです。今こそ、わたしたちは青年会議所の根底にある開拓の精神を奮い立たせ、持続可能な地域社会構築のために、与えられた機会を活かさねばなりません。わたしたちは、地域の明日に夢をみる青年の集合体です。多様な価値観を認め合い、極めて創造的な一歩を踏み出すことを宣言します。

 現在の日本は経済低迷やデフレの進行、人口減少に直面しています。さらに広い視野で捉えると、地球環境そのものが危機に面しています。地球温暖化や気候変動によって自然災害が多発し、国民や市民の生活を脅かしています。そのために日本ひいては世界の国々が協力し、脱炭素社会の構築やカーボンニュートラルを掲げた取り組み、脱プラスチックを始めとする環境や資源保護の視点を持った持続可能社会の実現を目指す運動が顕著にみられます。下関においても、SDGsを念頭に、バイオマス発電や風力発電による創エネルギー政策や地域性を活用したブルーカーボンを活用した取り組みを検討しています。この青く美しい空。透き通った海。癒しを与えてくれる森。この自然豊かなまちを守り、このまちならではの持続可能な循環システムへの展望を見い出すことは、未来への懸け橋になると信じています。

 万里にひとつの空が続く限り、わたしたちは壮大なビジョンと強い意志を持って、まちやひとの理想のカタチを模索し続けなければなりません。創立70周年をひとつの分岐点として捉え、まちやひとを守り、理想の社会に向かう集団であることの誇りと責任を会員一同で共有します。わたしたち自身が、下関青年会議所としての過去・現在・未来を大いに語り、その軌跡を紡げるよう精進します。

結びに

わたしたちは変わることができるか。

歴史や歩みは尊いものです。

しかしながら、わたしたちはひとりひとりが理想の実現に向かって、自己を疑い、他者を認め、価値観を揺らがす中で、自分たちの変化と向き合います。

社会が変化するスピードに負けない力強さで、高らかに拳を突き上げたい。

わたしたちは明るい豊かな社会実現のために尽力します。

超個体。新しい個の時代に。

わたしたちは誇り高きJAYCEEだ。

一般社団法人下関青年会議所
第70代理事長 田尾 繁太

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