はじめに
「新日本の再建は、我々青年の仕事である」
JC は戦後の荒廃期において若者たちの当事者意識の下、明るい豊かな社会の実現を目指し始まりました。この理念は日本全土へと伝播し、1953年5月4日に日本で41番目の地域青年会議所として、一般社団法人下関青年会議所は誕生しました。
以来71年の長きにわたり先輩諸兄姉が下関市の発展のためにご尽力され、その志は絶えることなく今日まで脈々と受け継がれ、本年72年目を迎えます。我々は、複雑化する社会課題の解決に取り組み、地域に希望を与える存在でなければなりません。
我々青年会議所の灯火を将来にわたって絶やすことのないよう、情熱をもって青年会議所運動を展開し、持続させていくことが下関の明るい未来への一歩になると信じています。
持続可能な地域の活性化を目指す新たな地域ビジョンの追求
現代では、人口の減少、超高齢化社会により労働人口は、2014 年 6,587 万人から2060 年には 3,795 万人にまで減少すると見込まれています。働く人よりも支えられる人が多くなる「人口オーナス」の状態に陥り、経済規模は縮小の一途を辿ることが想定されています。地方から都市圏への移住も加速し、人がいない過疎地域が急激に増加していきます。下関市においても他人事ではありません。
しかしながら、斬新で、大胆な取り組みにより人口が増加している地域もあり、これからの取組み次第で未来を大きく変えることができると考えています。下関市では下関駅から唐戸エリアまでの市街地の開発として「下関海峡エリアビジョン」によりビジョンが共有され、下関港ウォーターフロント開発、唐戸市場、海響館の改修、光の山プロジェクトに加え、下関北九州道路、山陰道の建設など交流人口の増加へ向けた取組みが積極的に行われております。
一方で、下関に住まう人々の生活をより良くするための大胆な取組みは、交流人口の増加への対策と比較すると、十分に進んでいないのが現状です。私たちは、地理的優位性を持ち合わせたこのまちで、地域の人々の生活をより豊かにするための仕組み作りに尽力し、下関における新たな形の地域ビジョンを追求していきます。
次なるリーダーを育成する教育の機会創出
昨今、対話型人工知能(AI)の「ChatGPT」が登場しました。先の未来において、AI が「思考」、「判断」、「表現」において「人」を超える能力を持つ可能性があります。少なくとも、今を生きる子どもたちが大人になる 10 年、20 年後にはそのような未来が到来していても不思議ではありません。OECD は、「ラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030」の中で、2030 年の子どもたちに必要な教育やスキルとして変革を起こすために目標を設定し、働きかけられるというよりも自らが働きかけ、型にはめ込まれるというよりも自ら型を作り、他人の判断や選択に左右されずに責任を持った判断や選択を行う能力が子どもたちに必要なスキルであると述べています。社会の変化が激しく、複雑化していき、未来の予測が困難な VUCA 時代、AI が台頭してきた現代において、変化に対応し、社会や人生をより豊なものにするためには子どもたちに必要なスキルであるといえます。
小学校・中学校・高校の各教科で教える内容を定めた学習指導要領が約 10 年ぶりに改訂され、「非認知能力」を重要な能力であると位置づけました。学校教育においても学びを変えていく取り組みがされているところではありますが、実務ではまだまだその取り組みが十分にされているとは評価できない状況にあります。
我々青年会議所が、子どもたちがそのようなスキルを得るために、地域社会をはじめ官民一体となって、継続的な教育の機会を創出することに尽力します。
持続可能な社会の創出のための組織、拡大・会員資質向上
我々青年会議所は、青年にリーダーシップの開発と成長の機会を提供するのが使命です。その機会を与えられた青年が成長し、能動的市民として活動することにより地域が少しずつ良くなっていき、明るい豊かな社会が実現されていく。青年会議所はそのような理念を掲げて活動しています。そのため、青年会議所の会員を増加させ、青年会議所活動を通じて能動的市民へ成長させていく。その結果、地域に対して革新的な影響を与え続けることができ、豊かな地域へと変化していくと信じています。全国的に青年会議所会員が減少し、消滅する LOM が増えている昨今です。青年会議所活動が行われなくなってしまった地域では、地域をより良いものしようとする活動の灯火が日に日に減っていくことになり、地域の衰退は加速します。下関に青年会議所が存続し続けるために、大幅な会員拡大が急務です。本年は純増 50%を目指して会員拡大活動を展開して参ります。
コロナ禍を契機に、我々青年会議所のあるべき姿、あり方というものに変化が生じています。これまで先輩諸兄姉から受け継いだ良き伝統が失われつつあるとともに、新たな価値観の下で新たな良い形へと変転したものもあります。我々は、時代に即した、時代の先を行く組織であり続けなければ、地域に革新的な影響を与えることはできません。そのためには、伝統を大切にしながらも、見つめ直し、我々が勇気を持って時代に先んじた変容を遂げていくことが重要です。また、青年会議所の掲げる理念を理解する会員の減少に伴い、活動意義を見失っているのではないかと感じることもあります。皆が同じ方向を向き一致団結して活動をしていくには、まずもって理念の理解と共感が必要です。理念に向かって会員同士がスクラムを組んで活動することで、1人では実現が困難なことも実現する力を生むことができます。新しいあるべき姿を模索しながらも、変わることのない青年会議所の理念に共感し、新たな青年会議所のあり方を全会員で体現していきたいと考えています。
地域活性化を目指すグローバル規模で考える広域地域連携
昨今の人口減少・超高齢化社会に伴う労働力人口の減少による国力の低下は吃緊の大きな問題です。日本国内、下関市内のみならず、近隣地域との連携を模索し、複雑化する社会を紐解き、課題解決へと奔走する必要があります。
在留外国人の数は、近年で 30 万人から 40 万人の規模で増えており、外国人労働者も平成 20 年から約 160 万人も増加しています。下関市においても外国人労働者を目にする機会が非常に増えました。他国の人々は地域社会の活性化のための重要な担い手となりつつあり、彼らとの関わりを避けることはできません。「国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的違いを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていく」多文化共生社会の構築を目指すことが、我々の住まう地域社会の活性化につながります。下関に住まう人々と他国の人々が尊重し合い、手を取り合って、豊かな社会を目指すための変革の起点となる運動を展開します。
JCI KOREA BUSAN、JCI 福岡とのトリオ締結は本年で 60 周年を迎えます。先輩諸兄姉が大切に紡いできた「同胞愛」をこれからも守り続けていかなければなりません。しかしながら、コロナ禍を契機に交流の形が変わりつつあります。60 年もの長きに亘る交流の歴史がもたらすパワーを活かし、それぞれの地域青年会議所が、手を取り合い、地域共通の課題に向き合うことで、新たな「同胞愛」の形を築くことができると考えています。唯一無二の「同胞愛」を築き、未来へ歴史を紡ぐために尽力します。
JCI 北九州とは長きに亘り、友好 JC として交流を深めてきました。関門海峡を挟む下関と北九州の景観をはじめとする地域特性は、日本全国を見渡しても類を見ない素晴らしいものです。下関北九州道路の建設、山陰道の建設により両地域へのアクセスが円滑になることで交流人口が増加し、両地域へ利益をもたらすでしょう。それに加え、両地域が各々の地域における共通の課題を共に解決し、一体的なまちづくりを行うことができれば、新たな可能性を見いだすことができると考えています。さらには、互いの地域に興味関心を持ち、地域資源、課題を相互に理解し、新たな価値あるパートナーシップを構築することで、両地域の発展を推し進める運動が展開できると信じています。
馬関まつりの新しい挑戦へ
1974 年、市民やまちの賑わいのために「歌と踊りとみんなの夜市」として始まった馬関まつりは山口県下最大のまつりへと成長しました。しかしながら、下関駅から唐戸エリア周辺における開発が進み、まちの様相が変わりゆく中で、どのように開催し、運営をしていくのかを見つめ直さなければなりません。馬関まつりは「まちづくり」事業であることを再認識した上で、まちの課題と向き合い、市民の笑顔とまちの賑わいのために新しい挑戦、青年会議所らしい新しい運動を展開して、変革の起点となる市民祭を目指すとともに、子ども達、家族、参加者、関係者の皆が笑顔になれるような事業を実施します。
結びに
情熱と信じぬく心を持っていれば、必ず共感を生むことができる
そして、われわれは、「だれか」のために存在していることを忘れてはならない今日も明日もその先も、目の前の大切な人のため、まだ見ぬ人のため、我々の力を信じ、情熱を持って運動を起こそう。
「火群ら」-いつもだれかのために-
第72代理事長 津田 清彦